各国情報IP Information
- 【ドイツ/特許】PCT出願の国内移行期限が31か月に延長 2022年6月更新
- 【EP/特許】欧州単一特許制度の概要 2022年6月更新
- 【イタリア/特許】PCTルートでの直接移行について 2019年11月更新
- 【EPC/特許】EPOの審査ガイドライン改訂 2019年6月更新
- 【イギリス/意匠・商標】BREXIT後の共同体意匠・商標に関する政府発表 2019年1月更新
- 【イギリス/意匠】ハーグ協定のジュネーブ改正協定への加盟について 2018年6月更新
- 【EPC/特許】進歩性の裏づけとして出願後に提出される実験証拠の可否 2017年11月更新
- 【EU/商標】商標規則の改正 2017年11月更新
- 【スペイン/特許】2017年4月1日施行の特許法改正による実体審査の義務化について 2017年9月更新
- 【EPC/特許】単一性欠如時に発行される部分サーチレポートの運用変更について 2017年6月更新
従前は、PCT出願のドイツへの移行期限は、優先日から30か月以内であったが、2022年4月30日以前に30か月の移行期限が満了していないPCT出願については、ドイツへの移行期間が30か月から31か月に延長となる。
1.概要
(1)単一特許制度が発効されると、1つの特許権で欧州全体(スペイン、クロアチア、ポーランドは除く)に効力を有する単一特許か、従前と同じ通常の欧州特許(選択した国に展開された国毎の特許権)か、の何れか一方を選ぶことができる。
(2)単一特許は、統一特許裁判所(UPC)の管轄となる。統一特許裁判所は、単一特許の侵害訴訟や特許取消訴訟等について、欧州全体に効力を及ぼす判決を下す。
(3)通常の欧州特許(登録済みの既存の特許を含む)は、制度移行のための暫定期間(移行期間と呼ばれる:7年間)は、各国裁判所と統一特許裁判所との両方の管轄となり、当該期間終了後に統一特許裁判所のみの管轄となる。通常の欧州特許の侵害訴訟や特許取消訴訟等に関して統一特許裁判所が下した判決は、当該特許の全展開国に対して一括的な効力を有する。
(4)移行期間が終了する前であれば、通常の欧州特許について、統一特許裁判所の管轄から離す手続き(オプトアウト)が可能。オプトアウトにより、複数の展開国において一括的に権利取消されるリスクを回避することができる。
(5)移行期間の前に、通常の欧州特許をオプトアウトするための3ヶ月の準備期間(サンライズ期間)が設けられている。
(6)単一特許の付与前段階(異議申立、訂正、取消手続を含む)は、EPCに基づく。単一特許の付与前段階は、従来の欧州特許の場合とまったく同じ。
2.単一特許制度の発効時期
統一特許裁判所協定(UPCA)第89条(1)に従いドイツのUPCA批准書の寄託日から発効。
※現状では具体的な開始時期は未定だが、2022年秋~冬頃の見込み。
[参考・出典]EPO欧州単一特許ガイド第2版
1.概要
2019年6月30日施工の産業法規の改正によって、PCT出願によるイタリアでの特許権取得の手順が変更される。
2.従前の運用
従前は、PCTルートからイタリアで特許権を取得するには、PCTルートでEPOに移行して審査を受け、特許付与後にイタリアで有効化させる必要があった。
3.変更内容
産業法規の改正により、PCT出願から直接イタリアへ国内移行して、イタリア国内において審査を受けることが可能となる。ただし、この新たな規定は、経済開発省による実施規則の発行によって有効化される。
1.概要
EPOは2018年11月に審査ガイドラインの改定を行った。
2.変更内容
(1)単一性(Part F Chapter V Section 2)
EPC規則44条においては、複数の発明が含まれる場合には、1つまたは複数の同一または対応する特別な技術的特徴を含む場合に単一性を満たすとされている。新たな単一性判断のガイドラインにおいては、(1)出願全体において異なる発明に向けられた請求項に共通な発明の主題があり、(2)これらの共通の主題が特別である必要がある必要があるとされた。これらの要件を満たさない場合には、共通の主題がない、または、共通の主題が特別でないことが示された上で、単一性違反が指摘される。
(2)特許適格性(Part G Chapter II Section 3.3-3.6)
数学的規則、精神的行為、コンピュータプログラム等に関する特許適格性について、変更が加えられた。
(3)口頭審理(Part C Chapter III Section 5)
審査部門において、最初のアクションの際に口頭審理を召還する場合の条件が明確化され、その運用の厳格化が図られた。
詳細につきましては、欧州特許庁ホームページをご参照下さい。
1.概要
2018年9月24日に、イギリス政府は、「合意なきEU離脱(No Brexit Deal)」の場合であっても、EU離脱(2019年3月29日)前に登録されている登録共同体意匠・欧州連合商標については、EU離脱後であってもイギリスにおいて有効である旨を公式発表した。
[参考・出典]
https://www.gov.uk/government/publications/trade-marks-and-designs-if-theres-no-brexit-deal
(1)概要
英国がハーグ協定のジュネーブ改正協定に加盟した。2018年6月13日より、英国を個別に指定した国際意匠出願が可能となった。
(2)内容
英国が寄託した加盟書には、以下の宣言が含まれている。
・第4条(1)(b):英国特許庁を通じた国際出願はできない
・第11条(1)(a):公表の延期の期間は、30か月よりも短い(出願日から12か月)。
・第17条(3)(c):保護の存続期間は、最長25年
詳細につきましては、下記をご参照下さい。
① ハーグ制度への加盟:英国(日本国特許庁)
② Hague Agreement Concerning the International Registration of Industrial Designs (WIPO)
(1)概要
欧州特許EP1169038 の取消に関する審決T488/16において、審判部は、当該欧州特許のクレームに記載された抗がん剤ダサチニブには進歩性がないと判断した。特許権者は異議申立手続において、EPOに提出された実験証拠に基づき反証を試みたが認められなかった。
(2)要点
出願人は、一般化学式(上位概念)で記載された広範な化合物群を特定するクレームから、特定の化合物(ダサチニブ)に限縮する補正を行った。しかし、ダサチニブを用いることによる技術的効果(PKT阻害)及び、PKT阻害剤としてのダサチニブの活性に「蓋然性」(plausibility)を与える証拠は、出願時の明細書に開示されていないため、EPOは進歩性を認めなかった。
また、出願人は、審査手続段階において、出願後に公表された文献(実験証拠)に基づき、クレームに記載された化合物(ダサチニブ)の効果(PTK阻害活性)を立証しようと試みた。
しかしながら、EPOは、出願後に公表された文献に記載された効果が、当該特許の有効出願日の時点で十分に想定可能であったことが立証できていないとして、当該文献を考慮しなかった。
1.概要
2017年10月1日より、改正EU商標規則が施行された。
2.主な改正内容
(1)写実的表現(Graphical Representation)要件の廃止
商標規則4条に規定される「商標の定義」から商標を視覚的に表示することに関する要件(Graphical representation requirement)が削除された。
この規則改正に伴い、EUIPOは出願形式の要件を定めた実施細則(EUTMIR)を改正した。例えば、音の商標を出願する際、楽譜による出願に加えて、音声ファイルによる出願も可能となる。
(2)EU証明商標制度の導入
新たに証明商標制度(Certification Marks)が導入される。
証明商標は、商品又はサービスが、証明商標の権利者が定めた一定の基準に適合することを識別するために使用される商標であり、一例としてWOOLMARKを挙げることができる。
(3)優先権に関する変更
従来は出願後に優先権を主張することも可能であったが、改正後は出願時における優先権の主張が必須となる。また、出願日から3ヶ月以内に優先権の主張に係る書類を提出する必要がある。
詳細につきましては、下記のEUIPOホームページに掲載されたNew EU trade mark regulationをご参照下さい。
(1)概要
2017年4月1日施行のスペイン特許法改正により、出願審査制度の一部が変更された。
(2)従前の運用
従前は、出願人は、実体審査(新規性及び進歩性に関する審査)を経る権利化手続、又は実体審査無しの権利化手続き(技術水準報告書の作成を請求する必要あり)を選択できた。
(3)変更内容
2017年4月1日施行の特許法改正により、実体審査が義務化されることとなった(スペイン特許法第39条及び第40条)。
[参考]
スペイン改正特許法・実用新案法条文(スペイン特許庁)
(1) 概要
単一性要件違反に基づく部分サーチレポート(partial search report)の運用が2017年4月1日より変更されている。
(2) 背景及び従前の運用
欧州特許出願において、サーチ段階で発明の単一性要件違反があると判断された場合、出願人に対して単一性要件違反に関する部分サーチレポートが送付され、最初にクレームされている発明(又はその発明のグループ)以外の発明をサーチするための追加調査料の支払いが要求される(規則64(1),(2))。
しかしながら、従来では、部分サーチレポートにおいては、最初にクレームされている発明等に対する特許性の見解は示されていなかった。
(3) 変更内容
部分サーチレポート及び追加調査料の支払いの要求とともに、最初にクレームされている発明(又はクレームされている発明のグループ)の特許性に関する仮見解書(provisional opinion)が添付されることとなった。
なお、仮見解書は出願人に対する情報として示されるものであり、応答義務はない。また、応答したとしても、その内容は後の拡張サーチレポートにおいて考慮されない。
※ 詳細につきましては、欧州特許庁が発行しているOfficial Journal March 2017をご参照下さい。